研究会活動
令和3年 活動報告
INDEX
- 令和03年11月18日
- テーマ:仕組債の過当取引・集中投資事案について
- 報告担当:今井孝直弁護士(大阪)、加藤昌利弁護士(兵庫)
- 令和03年06月17日
- テーマ:過当取引事案(名古屋地裁令和3年1月20日判決)
- 報告担当:内橋一郎弁護士(神戸)
- 令和03年05月31日
- テーマ:投資被害救済における行動経済学の知見の活用
- 報告担当:西田陽子弁護士、桜井健夫教授(東京経済大学)
- 令和03年04月12日
- テーマ(1):投資被害救済における行動経済学の知見の活用
- テーマ(2):インターネットを通じた金融商品取引における証券会社の説明義務
- 報告担当:西田陽子弁護士、櫛田博之弁護士、吉岡康博弁護士
令和03年11月18日
テーマ:仕組債の過当取引・集中投資事案について
報告担当:今井孝直弁護士(大阪)、加藤昌利弁護士(兵庫)
1.近時、一般投資家に対し、多数の仕組債の取引をさせるという、仕組債の過当取引、集中投資というべき事案が目立つようになっている。しかも、仕組債の中でも相当複雑な複数指数2倍連動債を次々に購入させるような事案も見受けられる。
このような事案について、通常の仕組債取引事案における適合性原則違反、説明義務違反に加えて、過当取引、集中投資というべき取引状況に着目して、違法性を論ずることができないかという観点で検討を行った。
2.報告担当者から、各自が取り組む、仕組債の過当取引・集中投資事案についての報告があった。発表担当者からは、早期償還後の乗り換えや新たな資金による買い増しを繰り返し、全部で20件以上の仕組債を購入させられ、最終的には、2500万円以上の損害を被った事案などの報告があった。
3.仕組債の過当取引・集中投資事案については、そのような投資を行わせることで、①コストが過量になるという側面と、②リスクが過量になるという側面があるのではないかとの議論がされた。
4.違法性に関する法律構成としては、適合性原則違反のうち、量的適合性の問題として捉えられるのではないかとか、平成17年7月14日最高裁判決の補足意見にある指導助言義務の問題として捉えられるのではないかなどの議論もなされた。
5.また、各会員が取り組む訴訟において、顧客に過大なコスト負担をさせていることを明らかにさせるための主張立証上の工夫についても報告、意見交換がされた。
6.今後の取組として、これまで獲得した裁判例について、手数料やリスクの量の問題という観点で、改めて分析をしてみる、学者との意見交換をするなど、仕組債の過当取引・集中投資事案について、さらに議論を深める必要があるだろうとの申し合わせがされた。
文責:加藤昌利弁護士
令和03年06月17日
テーマ:過当取引事案(名古屋地裁令和3年1月20日判決)
報告担当:内橋一郎弁護士(神戸)
1.内橋弁護士から、担当事件である資本金1000万円、従業員数10名の中小企業の代表取締役であった男性(取引開始時66歳)にハイリスクな信用取引をさせ、総額4700万円余りの損失を負わせた事件につき、過当取引の違法性及び指導助言義務違反を認定し、2600万円弱の損害賠償(過失相殺5割)を命じた勝訴判決の報告があった。
2.原告は事業経営者であり、資産も投資の意欲もあったが、仕事が忙しく、基本的には担当者を信頼して任せていた。判決においては、原告が、支店長に対し、信用取引口座開設に際し、「もうけは多少少なくてもよいが、無理がないよう、大きな損がないようにしてくれ」との趣旨の発言をしていた旨が認定されている。
3.本件信用取引の客観的側面として、5か月26日の間に、新規建玉426回と決済334回の合計760回の取引がされており、その買付総額が12億4901万円余りであること、新規建玉426回の保有日数を見ると、3日以内のものが約69.2%を占めている旨認定された。また、本件信用取引において売買された全28銘柄中19銘柄が新興市場の銘柄であること、全28銘柄中17銘柄が日々公表銘柄に指定されていたこと等も認定された。
4.結論として、本件信用取引の過当取引違法と、過当な取引を行う場合の情報提供義務違反、過当取引を行わないように指導すべき指導助言義務違反が認められた。
5.内橋弁護士は、準備書面に添付した資料1~4を用いて、効果的な主張・立証の方法を紹介した。例えば、資料1として、新興銘柄の場合、会社の設立時期、従業員数などを指摘することで、原告の経営する会社と変わらない規模であることを主張・立証する方法が紹介された。また、日々公表銘柄等の指定については、東京証券取引所に23条照会をして入手する方法が紹介された。
6.電話会話の録音記録について、本件では、証券会社が証人尋問前に一部しか開示しなかった。にもかかわらず、当該証券会社が、尋問の後で未開示としていたもののうちから自社に有利な部分を抜き出して提出してきた。内橋弁護士はその点について証拠弁論に力を入れて批判しきることができた。しかし、そのような不公正な録音記録の利用を許さないために、全ての録音記録を証券会社に開示させるようにすることが基本であろうとの意見交換がなされた。
文責:西田陽子弁護士
令和03年05月31日
テーマ:投資被害救済における行動経済学の知見の活用
報告担当:西田陽子弁護士、桜井健夫教授(東京経済大学)
1.西田会員より、桜井健夫弁護士「消費者被害救済の実務における行動経済学的知見の活用」(現代消費者法33巻61頁以下)の概要について報告がなされた。
2.助言者である桜井教授(東京)より、同教授の論文「仕組商品の規制-商品適合性、時価・手数料開示の先にあるもの-」(現代法学30号2016年2月)を元に以下の報告がされた。なお、同教授は弁護士でもあるので、実践的な視点からの助言をいただくことができた。
- 米国、EU、英国における仕組商品の規制
- 同論文において紹介されている各国の行動経済学的要因についての検討・調査
- リスクを過小評価される構造的要因は、①商品構造が複雑であること、②(リスクに見合った対価が得られないため)リターンから想定するより大きなリスクがあることに気づきにくいこと
- 「司法研究報告」における提唱「不適合商品勧誘の不法行為」の紹介
同報告では、適合性原則はリスク許容度に対する適合が重要であり、説明義務の程度は「リスク過小評価を修正する程度の説明でなければならない」とされている。
しかし、買わないように説明する義務に近くなるため、そこまで言えるかは問題。
3.以上、1・2の発表を元に、「行動経済学」の知見を具体的な実務においてどう活用して行くかについて意見交換を行った。加えて、本日を端緒として、今後も追究を続けることを申し合わせた。
文責:西野里奈弁護士
令和03年04月12日
テーマ(1):投資被害救済における行動経済学の知見の活用
報告担当:西田陽子弁護士、櫛田博之弁護士
1.西田会員より、桜井健夫弁護士「消費者被害救済の実務における行動経済学的知見の活用」(現代消費者法33巻61頁以下)の内容について報告がなされた。
2.櫛田会員より、廣谷章雄・山地修判事「現代型民事紛争に関する実証的研究―現代型契約紛争(1)消費者紛争」のうち、投資被害救済に関連する点について報告がなされた。
以上につき、意見交換を行った。
テーマ(2):インターネットを通じた金融商品取引における証券会社の説明義務
報告担当:吉岡康博弁護士
吉岡会員より、インターネットを通じた金融商品取引(原油ブル取引)における証券会社の説明義務に関して、報告がなされた。
以上につき、意見交換を行った。
文責:櫛田博之弁護士