研究会活動

平成31-令和2年 全国証券問題研究会 大会報告

INDEX

令和2年02月28日
〜29日
第61回 全国証券問題研究会 仙台大会
報告担当:片岡利雄弁護士
令和元年09月14日
第60回 全国証券問題研究会 東京大会
報告担当:片岡利雄弁護士
平成31年03月08日
〜09日
第59回 全国証券問題研究会 大分(別府)大会
報告担当:片岡利雄弁護士

令和2年02月28日〜29日

第61回 全国証券問題研究会 仙台大会

報告担当:片岡利雄弁護士

1日目

午前のプログラムは、吉岡康博会員(大阪)から入門講座「-反対尋問事項の組み立てについて-」のレクチャーがなされた。今回は、証券事件の取り組みの中で重要である尋問技術のうち、会員にとって最も関心事である担当外務員に対する反対尋問について、近時に取り組まれた具体的な事件を素材に、心構えも含め、大変実践的なお話を頂いた。

午後のプログラムは、地元仙台弁護士会の挨拶に続いて、大迫惠美子会員(代表幹事・東京)からの基調報告の後、まず、昨今、世間を騒がせているかんぽ生命の不当・違法勧誘問題を契機として、当研究会でも保険に関する基礎的な知識を習得し、保険商品の被害についての問題意識やその着眼点を会得すべく、保険法の分野の第一人者である同志社大学大学院の山下友信教授から、「保険勧誘の法規制と民事法の課題」とのテーマで、基調講演を頂いた。

続いて、休憩の後、実務家の立場から、桜井健夫会員(東京)から、「保険勧誘に関する実務上の諸問題」と題して、保険に関する様々な紛争事例に関する講演を頂いた。

続いて、2回目の休憩の後、田上潤会員(東京)より、「証拠保全における裁判所・証券会社での対応に関する検討」と題して、証券事件の要である証拠収集に関し、豊富な対応事例を基に極めて実践的で役に立つお話を頂いた。

1日目の最後は、勝訴判決・和解報告として、三木俊博会員と片岡(大阪)から、仕組債、外国株、信用取引に関する適合性原則違反、過当取引の違法を認めた大阪地裁令和元年1月31日の判決報告、古川幸伯会員(大阪)から、外国株、信用取引について適合性原則違反、過当取引等の違法性を主張して成立した神戸地裁令和元年12月23日和解報告がそれぞれ、行われた。

2日目

午前9時から、上柳敏郎会員(東京)から、同会員が委員を務められている、金融審議会市場ワーキンググループの報告資料中、米国の最善の利益規則(2020年6月までに完全実施)等のお話を頂いた。

9時20分からは、高齢者と金融取引に関し、上柳敏郎会員(東京)から「金融ジェントロジー」と題して、また、石戸谷豊会員(神奈川)から行動経済学の知見も引用しつつ、制度及び裁判例について、それぞれ講演頂いた。

続いて、10時10分から、上柳会員(東京)と同じく金融審議会の委員である、坂勇一郎会員(東京)より、「金融サービス仲介法制の見直しについて」とのテーマで、オンラインによって新たな仲介業者による金融サービスビジネスが行われる場合の行為規制等につき、最新の法案審議に向けての検討状況に関する報告を頂いた。

11時からは、大阪、兵庫、京都、奈良の各弁護士会が連携して2019年9月27日から10月3日までに実施した「生命保険問題110番」の結果について、住田浩史会員(京都)、加藤昌利会員(大阪)から、秋田弁護士会において2019年12月10日に実施した「生命保険110番」の結果について、近江直人会員(秋田)から、それぞれ報告を頂いた。

11時30分からは、1日目午前の入門講座を担当頂いた吉岡康博会員(大阪)から、野村證券の「NEXT NOTES 原油ブル」ETN(上場投資証券)の勧誘につき、原指標が上昇、下落を繰り返す場合、複利効果により逓減していく特性に関する説明義務違反が認められた津地裁伊勢支部令和元年11月28日判決の報告を頂いた。

最後に、次回、第62回は、青森の地で、令和2年10月23日(金)、24日(土)先物取引被害全国研究会との共催で実施されることが告げられ、盛会のうちに終了した(なお、その後、新型コロナ肺炎の感染拡大防止のため、第62回は、オンラインで実施されることに変更された)。

令和元年09月14日

第60回 全国証券問題研究会 東京大会

報告担当:片岡利雄弁護士

今回は初の1日間、日帰りの研究会として行われた。

午前のプログラムは、今井孝直会員(大阪)から入門講座のレクチャーがなされた。今回は、論点ごとに証券取引事件の取り組みに必要な基本書証を押さえるという観点から、わかりやすくお話を頂いた。

午後のプログラムは、大迫惠美子会員(代表幹事・東京)からの基調報告の後、まず、司法研究報告書(司法研修所編)に対する会員の理解を深めるべく、同所の協力研究員として「本研究に寄せて」との序文を書かれている、東京大学大学院法学政治学研究科の神作裕之教授に「金融商品の勧誘・販売ルール-説明義務・適合性原則を中心に-」と題して、基調講演を頂いた。

続いて、休憩の後、証券取引被害事件のうち、比較的成果が上がっている過当取引事件について、桜井健夫会員(東京)をコーディネーターとし、正木健司会員(愛知)、志水芙美代会員(東京)、安田孝弘会員(姫路)の3名の方々をパネラーとして、各会員が最近に担当した事件を素材に、違法論や主張立証の工夫について、会員にとって有益な意見交換やディスカッションをして頂いた。

続いて、事件報告として、小森義徳会員(愛知)から高齢の認知症男性(死亡)の豪ドル建の投資信託について適合性原則違反、説明義務違反を主張し、長男の過失相殺を考慮して和解が成立した事件、三木俊博会員(大阪)から起訴前の証拠保全として文書送付嘱託の決定が出た事件の、それぞれ報告がされた。

最後に、次回、第61回は、いつもどおり、仙台の地で、令和2年2月28日(金)、29日(土)の2日間、開催されることが告げられ、盛会のうちに終了した。

なお、終了後の懇親会において、前回(大分大会)以降、当研究会の原始会員であり、証券取引被害救済にその半生を捧げられた偉大な先輩である、櫛田寛一会員(大阪)、田中清治会員(東京)がお亡くなりになり、その追悼セレモニーも行った。

平成31年03月08日〜09日

第59回 全国証券問題研究会 大分(別府)大会

報告担当:片岡利雄弁護士

1日目

午前のプログラムは、島幸明会員(東京)から入門講座のレクチャーがなされた。今回は、ご自身が取り組まれたみずほ証券仕組債事案(東京地裁平成28年6月17日判決)を題材に、事案の相談から判決に至るまでのプロセスを通じて、具体的にどのように取り組んだか、わかりやすくお話を頂いた。

午後のプログラムは、地元大分弁護士会の挨拶に続いて、松田繁三会員(代表幹事・大阪)からの基調報告の後、まず、司法研究報告書(司法研修所編)にもその代表的な学説として紹介されている、南山大学の王冷然教授に、姫路大会以降、継続してきた同報告書の分析研究の総まとめをお願いし、「適合性原則違反に関する裁判実務の判断手法の再検討-公益法人を対象とするものを中心に-」と題して、基調講演を頂いた。

続いて、休憩の後、前回(岡山大会)に続き、金融庁総合政策局主任統括検査官の水野清司氏から、「『顧客本位の業務運営』の浸透・定着に向けて」と題し、同原則の浸透・定着に向けた各金融事業者の取り組み状況を客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)を取組方針とともに数値化して公表している現状(例えば、投資信託の販売会社における比較可能な「共通KPI」として運用損益別顧客比率を公表した96社合算ベースで、2018年3月末を基準日とした場合、5割弱の顧客の運用損益がマイナスになっている事実を金融庁のホームページで公表)など、改革中の投資信託の運用を中心に興味深いお話を頂いた。

続いて、投資信託に関する事件報告を三木俊博会員(大阪)、安田孝弘会員(姫路)、片岡(大阪)から、それぞれ行った。

2日目

久々の会員獲得の勝訴判決として、午前9時30分から、上田孝治会員(神戸)の、高齢の夫婦の国内現物株式取引の適合性原則違反、過当取引の違法性を認めた神戸地裁平成30年9月10日判決の報告、午前10時30分から、塚田裕二会員、中森麻由子会員(いずれも東京)の、難聴の高齢男性の東証マザーズ、ジャスダック上場株式の説明義務違反の違法を認めた東京地裁平成30年10月19日判決の報告がそれぞれ行われた。

午前11時からは、事件報告として、前回(岡山大会)の竹村直樹会員(東京)に続き、桜井健夫会員(東京)より、野村證券NEXT NOTES S&P500 VIX インバースETN事件の報告がされ、続いて、吉岡康博会員(大阪)から、会員の手持ち事件のアンケート結果が報告された。

最後に、次回、第60回は、東京で、初めての試みとして日帰り1日間の予定で、令和元年9月14日(土)に開催されることが告げられ、盛会のうちに終了した。