法律相談

法律相談Q&A

株式

株取引で損をしましたが納得できないところがあります。損害を賠償してもらうことはできるのでしょうか?

株取引をして損を蒙る場面には様々のものがあります。ここでは次の3パターンを解説します。

1.まずは証券会社の勧誘に問題がある場合です。証券会社の営業員は営業成績を上げるためときに強引な勧誘に及び、その結果として顧客が不本意な取引を行ってしまうことがあります。たとえば、営業員から毎日のように電話があり、その電話のやり取りだけで目まぐるしい回数の取引をさせられることがあります。このような事件では、家族などが冷静に取引報告書を見ると手数料だけでもかなりの額を支払っていることが分かり、また株価自体も下がっていることも分かり、ようやく被害が明るみに出たりします。このような被害類型を「過当取引」といいます。

また、資産はすべて預貯金で運用する意向であったのに、営業員の熱心な勧誘に押されてほぼ全資産を株式に投資させられ多額の損害が発生したという事件もあります。このような事件は「適合性原則」に違反する勧誘であったかどうかが問題となり、顧客の意向と実情に反する過大なリスクを負わせるような勧誘であると認められれば損害賠償請求ができます。

このように、形式的には顧客の同意を得つつ株式取引が行われていても、証券会社が注意義務を怠った勧誘をしたといえる被害がしばしば見られ、このような場合は損害賠償請求ができます。

2.次に発行会社の情報開示に問題があるものです。例えば、発行会社が粉飾決算をしていたことなどが報道されて株価が暴落し、損害を蒙るという場合もあります。このような場合、発行会社や役員その他の関係者が損害賠償責任を負うことが法律上定められており、その責任を追及することが可能です。

3.さらには何の価値もない株式を騙されて購入させられたという場合もあります。例えば東京証券取引所に上場する見込みなど全く無い会社なのに、その見込みがあると告げられ購入したが、その後待てども上場せず、販売した会社に連絡も付かなくなったという場合です。

このような場合は詐欺といえ、取引そのものが無効となり、あるいは取り消すことが可能であり、売買代金の返還が請求出来ます。もちろん発行会社その他の関係者への損害賠償請求も可能です。もっともこの種の事件では請求の相手方を探し出すことや強制執行が困難な場合が少なくありません。

仕組債

仕組債とは、何でしょうか?

仕組債とは、従来の債券にデリバティブと言われる仕組みを組み込んで、満期やクーポン(利子)、償還金などを、さまざまな形態に設定した債券のことです。

EB債、日経平均リンク債、株価指数リンク債等と呼ばれるものがそれで、売り手が自由に作れるので多数の種類がありますが、概ね、一定の期間(満期)内に、相場(株価や為替相場)が一定以上に上昇すると預金よりはるかに高い金利を取得できて元本が戻ってくる一方、一定以下に下落すると元本を大きく毀損する内容をもっています。しかし、ほとんどの場合、オプション取引というリスクの高い取引が組み込まれていて、顧客に有利な方向に相場が上昇しても、一定の金額で早期償還されてしまい、得られる利益は限定される一方、顧客に不利な方向に相場が下落した場合には、満期まで解約できず、損失は限定されず最悪元本全額を失うことがあります。

多くは、預金をはるかに上回る見かけ上の高金利をうたっているため、これに惹かれて購入する投資家が多いですが、基本的な取引の仕組みが複雑で、さらにノックイン条件がついたりレバレッジがかかったりすることによって、リターンに比べてリスクがかなり高いことに注意すべきです。しかも、仕組債には株式のような取引市場がないため、満期までの期間、相場が下落しても、基本的には売却して損失の拡大を防ぐことができず指をくわえて見ているしかありません。そのため、仕組債は、購入時点で、満期までの株価や為替相場の変動を適切に予測できる能力を持った人でないと投資判断ができないものなのですが、そのような予測はプロでも不可能ないし困難と言われており、そうなると、満期までの間の相場の騰落に賭けるしかないというのが実態と考えられます。

営業マンから勧められて仕組債を購入していたところ、大きな損が発生しました。法的に損害を賠償してもらえるのでしょうか?

仕組債は、上記のような仕組みが複雑でリスクの高い商品なので、これを勧誘する相手は、そのようなハイリスク商品に適合する顧客である必要があります。高齢者等で理解する能力が十分でない人、ハイリスクな投資をする意向を有していない人、保有資産等からみてそのようなリスクを負うのが相応しくない人等に勧誘した場合は、適合性原則違反として損害賠償の対象となることがあります。

また、このような商品を仕組債の知識や取引経験の乏しい顧客に購入勧誘する場合は、営業マンには、取引の仕組みやリスクを十分に分かりやすく説明し、顧客が正しく理解できるように説明する義務があります。一応の説明をしたとしても、ノックインの条件が存在するのに、現在の相場からすると現実には発生する可能性はほとんどないようなセールストークを使うなど、高金利の方向の有利性のみを強調した説明も、説明義務違反になり損害賠償の対象になると考えられます。

仕組債によって損失を被った場合は、以上の適合性原則違反、説明義務違反に該当する場合が相当多いと考えられるので、早期に証券取引被害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

デリバティブ

デリバティブ取引とは何ですか?

デリバティブとは、金融派生商品と訳されるもので、たとえば、株式を売買したり、ドルを買売したりする単純な取引をもとにして、一定の株式を安く買う権利、ドルを安く買う権利(コールオプション)、株式を高く売る権利、ドルを高く売る権利(プットオプション)などいう、「権利」などが取引されるものです。また、一定期間後に決済することで、現在は安い証拠金で大量のものを売買できる先物取引(ニューヨークの原油先物取引が有名です)などというものもあり、それぞれ、リスクヘッジや、新しい投機、投資として各種のものが開発され、取引されています。また、別の項目で説明する仕組債には、オプションが組み込まれたものがあるなど、現在の証券取引に不可欠なものとなっています。

デリバティブ取引による被害はどんなものがありますか?

日経平均株価指数の動きによって損益が発生する、日経平均オプション取引は、証券取引所に上場されているのですが、日経平均オプションの、「売り」取引は,日経平均株価が暴騰(暴落)しない限り、大抵の場合、一定の利益が生じることから、一般の投資家の中にもにも利用する人が増えています。しかし、東日本大震災の時ほどではなくても、何年かに一度は株価の大暴落も確実に生じることから、そのような時に日経平均オプションのプットオプションの「売り」取引を大量に行っていた投資家が、破産しなければならないような大損害が生じた事件につき、証券会社の説明義務違反の責任が問われた判決があります。

また、ドルを買うコールオプションと、ドルを売るプットオプションを、向こう何年間の分を、何十、何百と大量に契約することで契約コストを非常に安く設定した上で、その間にドル高になるか、一定の数値までのドル安で収まれば毎月、一定の利益が得られるところ、想定外に、一定以上のドル安になってしまったために、莫大な損失が発生した、などという事件につき、証券会社の説明義務違反の責任が問われた判決があります。

デリバティブ取引分野は、これからも各種のデリバティブが開発されて、各種の被害が発生するものと予想されるものです。

外債投資

高い金利を得られるとのことで、南アフリカ・ランド建てやトルコ・リラ建ての外国債券の購入を勧誘され、保有していた証券類(株式など)を売却して乗り換えました。為替変動の結果、元本が大きく減少してしまいました。納得が行きません。損害の賠償を求めることができるのでしょうか?

最近、我が国の預金金利・国債金利などが余りに低いことから、特に、高齢者層の中で、定期的に高い分配金を得られる投資信託や同様に高い金利を得られる外国債券(以下「外債」と略称します)に関心が強まり、証券会社や銀行・信金などの金融機関も競ってそれらの金融商品を勧誘販売しています。我が国の公社債が低金利であることに比べて、確かに、外債は高金利を付けています。しかし、主として、次の点に注意が必要です。発行体の信用度、為替変動の大小・見通し、集中投資の危険性。あなたが購入した外債の発行体が世界銀行など信用度の高い金融機関なら心配は要りませんが、もし、信用度に不安がある場合、元金償還の際に全額が無事に償還されるかどうかに疑問があります。それよりも注意するべきことは、為替変動の大きさです。南アフリカの通貨ランドやトルコの通貨リラと言った発展途上国の通貨については、日本円との交換価値(外国為替)の変動がずいぶん大きいので、ランド安やリラ安と言った円高が進行した場合、満期償還時に受け取る償還元金が円換算では大きく減少することが起こります。現によく起っています。

あなたが購入勧誘を受けた際に、ランド安やリラ安(=円高)となった場合に、どの程度の元本割れが起こり得るかという具体的な説明を受けたでしょうか?それを納得して購入したでしょうか?また、あなたの保有する金融資産の中で、このランド建てとリラ建ての外債が、もし、大半を占めているということであれば、行き過ぎた集中投資となっている可能性があります。もし、外債購入時に、為替変動の大きさとそれに基づく元本割れの程度について具体的に説明を受けないまま、高金利が得られる安全性の高い金融商品だと勧誘されたのであれば、説明不十分と言えます(説明義務違反に該当)。また、あなたの金融資産は老後生活の基盤資産でしょうから、その大半を大きな為替変動によって大きく減少する危険のある外債に集中することを誘導したことは、あなたの投資意向や資金性格に相応しくないことであったと言えます(適合性原則違反に該当)。

以上のようなことがある場合には、あなたが蒙った損害の賠償を求めることができます。但し、説明不十分などと言える証拠が有るかどうか、不十分の度合いが大きいかどうか等の検討が必要ですので、証券取引被害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

投資信託

営業マンから勧められて投資信託を購入していたところ、大きな損が発生しました。法的に損害を賠償してもらうことはできるのでしょうか?

一般的に投資信託は、販売手数料を販売会社に支払う仕組みであるため、本来は中長期的な保有により資産の値上がり益を得るべき商品です。しかし、担当者のノルマや成績向上のため、比較的短期間で多数の投資信託に乗換えるよう勧誘されることがあり、これにより最終的に大きな損失が発生する場合があります。損失発生の原因は、乗換えの都度販売手数料が発生することに加え、顧客に適合しないハイリスクな投資信託や複雑な仕組みの投資信託であったのに説明が不十分で投資判断がなされないまま資産の多くが投資されることにあります。

投資信託というと、比較的安全な金融商品であると誤解されがちですが、必ずしもそうではなく、ハイリスクの商品や複雑な仕組みの商品も存在します。したがって、一連の投資信託の売買が顧客との関係で適合したものか(「適合性の原則」といいます。)については、実際に勧誘された投資信託等の投資方針・投資対象が何かなどという商品特性がポイントとなります。さらに、ハイリスクの投資信託では保有資産のうちどの程度がその商品に充てられたかが、乗換売買の場合には、その規模・回数、目的・意向などがそれぞれポイントとなります。

したがって、ハイリスクな投資信託や複雑な仕組の投資信託に資産の大部分を集中投資する状態が続き、短期間で乗換売買が繰り返されているようなケースでは適合性原則違反が認められ損害賠償請求できる場合があります。

また、金融商品取引業者には、新に勧誘する商品の内容、仕組み、投資方針(元本重視の取引か、利子・配当重視の取引か、値上がり益重視の取引か等)といったリスクを十分に説明する必要がある上に、乗換売買を行うに当たっては、売却する各商品の状況及び通算の損益状況、手数料等の顧客が負担する内容等、乗換売買を行うことのメリット並びにデメリット及びリスクについても、投資者の属性を踏まえて十分に説明をする必要があります。

これらの説明が十分になされないまま乗換え売買が続けられたような場合には、説明義務違反に当たり、損害賠償請求できる場合があります。

さらに、金融商品取引業者は、当該顧客の知識・経験、投資目的、資金力に照らして、不適切に多量でひんぱんな投資活動に勧誘し、自己の利益を図ってはならないという義務を負うというべきです。したがって、過当な取引が担当者の主導で行われ、手数料が高率の商品の短期乗換売買や合理性のない乗換売買が繰り返されているような場合は、顧客の利益を犠牲にして金融商品取引業者の利益を図ったものとして無意味な反復売買、乗換売買に当たり損害賠償請求できる場合があります。

外国株取引

日本の株式では利益が見込めないとして、米国や中国の株式での投資運用を勧められました。米国や中国の企業のことやその株式のことなど良く分からないのですが、上手に誘導すると言うので、それではと外国株取引を始めましたが、外務職員の誘導に従っているうち、良く分からないまま、売ったり買ったりが多数行われ、結局、大きな損失となってしまいました。被害の回復は可能でしょうか?

最近は我が国の株式市場も回復基調にありますが(平成27年6月執筆)、以前は長い間、低迷基調にありました。そこで、多くの証券会社が、株式取引で売買利益を得るには、日本株式ではなく、米国株式(ニューヨーク・ナスダック証券取引所に上場された米国企業銘柄)や中国株式(香港証券取引所・上海証券取引所に上場された中国企業の株式銘柄)が有力であるとして、その旨を個人投資家に勧誘して来ました。我が国企業の業績が低迷し、個人投資家が購入・保有していた日本株式では多くの銘柄で含み損失が生じており、その回復が見込み薄であるから、それら日本株式を損切り売却して、外国株式に乗り換えようとの勧誘も良く行われました。

しかし、外国株式には、日本株式に比較して、次のような問題点が有ります。

1.対象企業の業容・業績の情報や対象銘柄の株価推移や今後見通しの情報が少ないこと。現地の証券取引所に上場されている銘柄なら、かなりの情報が公開されているのですが、いずれも、英語情報や中国語情報であって、日本語での分かり易い(日本株式の場合と同程度の)情報は提供されていないのです。※1

2.それら外国株式は、現地での経済情勢・市場情勢の変化に敏感に反応しますが、それら米国や中国の情勢とその変化についても、一般的社会的な情勢情報はともかく、投資判断に必要な具体的情報までは、即ち、日本語での分かり易い(日本株式の場合と同程度の)情報までは提供されていません。

3.しかも、売買取引が米ドル建て(米国株式の場合)や香港ドルなど(中国株式の場合)で損益が計算されるので、為替変動が日本円に不利に推移した(円高)場合、現地通貨では利益勘定なのに円換算すると損失勘定に帰したり、現地通貨での損失勘定が更に拡大してしまうこともあります。為替変動にも十分な注意が必要なのです。

4.また、売買取引の多くが「仕切取引」(「相対取引」で「店頭取引」とも言います)で行われるので、売買手数料がいくらであるかが分かりません。投資運用の経費(コスト)が分からない取引態様となっています。そのことに乗じて、証券会社が大きな利益を得ることが可能な仕組みとなっています。※2

以上のようなことから、外国株式取引は、個人投資家にとっては余り相応しいものではありません。個人投資家では経験豊富な方に限って、その運用資産の一部に止めて投資運用する対象だと言えます。

あなたは、外国株式のことを良く知らないまま、外務職員の誘導で売ったり買ったりを多く繰り返したとのことです。そうであるなら、そもそも外国株取引に相応しい投資家ではなかったと言うことであり(適合性原則違反)、個々の売買取引でも対象銘柄について十分な情報提供を受けていなければ、説明不十分と言えましょう(説明義務違反)。また、外務職員の誘導による売買取引が頻繁だったなら、過当取引(違法)に該当する可能性もあります。

具体的な被害回復を目指すのであれば、証券取引被害に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。