研究会活動

平成27-28年 活動報告

INDEX

平成28年03月11, 12日
第53回全国証券問題研究会浜松大会
平成28年02月18日
テーマ:平成27年12月25日名古屋地裁岡崎支部判決(FXターン債)
報告担当:中嶋弘弁護士(大阪)
平成28年01月14日
テーマ:「デリバティブ商品の構造とプライシング」
外部講師:足立教授@同志社大学
平成27年12月10日
テーマ:神戸地方裁判所姫路支部平成27年4月15日判決(証券過当取引)
報告担当:安田孝弘弁護士(姫路)

平成28年03月11, 12日

第53回全国証券問題研究会浜松大会

1日目

午前のプログラムは、まず、研究会の初代代表である武井共夫弁護士(横浜)から、入門講座①「証券問題一般」のレクチャーがなされた。証券取引被害救済の歴史に始まり、FP資格取得も視野に入れた証券投資の基礎知識の習得の必要性・重要性、実際の被害相談の取り組み方、訴訟における要諦、とりわけ、原告本人尋問の重要性を強調されていた。

続いて、入門講座②「デリバティブ」では、金融機関で実務経験もある浅川弁護士、石塚弁護士(いずれも横浜)からデリバティブの基礎知識や仕組債取引の実際について、貴重なレクチャーを頂いた。

お昼の時間帯には、初の試みである、ランチョンセミナーが開催され、地元静岡の岡島順治弁護士が一昨年に再審が開始され、48年ぶりに釈放された袴田巌氏ご本人をお招きして、今春公開される映画「夢の間の世の中」を紹介しながら、袴田事件についてお話された。

午後のプログラムは、地元静岡県弁護士会の挨拶に続いて、内橋一郎弁護士(兵庫)からの基調報告の後、まず、地元静岡大学大学院法務研究会科教授の宮下修一先生から「適合性と高齢者保護」とのテーマで、平成25年以降の裁判例の詳細な分析を踏まえた丁寧なご講演を頂いた。宮下先生は、適合性原則違反の判断に当たっては、加齢に伴う判断力の低下を踏まえた上で、具体的な取引内容やリスクを理解できるか否かを慎重に検討するとともに、今後の財産の形成可能性や具体的な投資意向の有無を考慮して判断することが必要であると述べられた。

続いて、同志社大学政策学部教授の足立光生先生から「デリバティブ〜その仕組みと直感的理解」と題して、実務経験者として、金融工学の研究者として、わかりやすくデリバティブのプライシング(時価)について講演を頂いた。その結論は、デリバティブのプライシング・モデル(原資産のどのように動くか・確率過程)には様々な選択肢があり、モデルが決まっても、原資産がどのくらいリスクを持つのか、ボラティリィティ等の変数を代入する必要があり、これらの点について、販売者サイドと投資家の間で同意が必要であるとの、示唆に富む内容であった。

また、ご講演の後、「対談・デリバティブ」と銘打ち、足立先生にインタビューする形で、中嶋弘弁護士(大阪)から様々な角度から、各地の弁護士が訴訟で直面している問題点について質問が行われ、丁寧に回答がなされた。ここでも、公正な市場の実現のためには、販売サイドから投資家側に対し、プライシング・モデルとボラティリィティの開示、頻繁な時価の開示の必要性等が強調されていた。

2日目

午前9時から加藤昌利弁護士(兵庫)の「プロ向けファンド政省令解説」、9時30分から安枝伸雄弁護士(京都)の「最判平成17年再考」と、それぞれ報告があった。後者は、昨年9月の京都大会での報告内容をさらに進化させたものであり、とりわけ、各違法要素の主張とともに、一体的不法行為構成(全体として明らかに過大な取引を積極的に勧誘しているとの構成や原始的な社会相当性逸脱構成)をとっておくべきとの点は、被害救済の進むべき突破口を示すものである。

続いて、午前10時40分からは、古川幸伯弁護士(大阪)から、①大阪高判平成27年12月10日(みずほ証券・EB債)判決、中嶋弘弁護士(大阪)から、②名古屋地判岡崎支部平成27年12月25日(野村證券・FXターン債)判決の各事件報告があり、その後、各報告へのコメントを田端聡弁護士(大阪)が述べた。前者については、金融商品販売法上の説明義務違反で請求が認容されており、難しいと思われがちの法律構成でも主張しておくべきことの重要性、後者については、会話録音記録の証拠なしに認容された久々の判決ということで、裁判官を如何に原告代理人が説得できるかということの重要性が指摘された。

最後に、次回、第54回は、山形の地で、平成28年9月2日(金)、3日(土)に開催されることが告げられ、盛会のうちに終了した。

平成28年02月18日

テーマ:平成27年12月25日名古屋地裁岡崎支部判決(FXターン債)

報告担当:中嶋弘弁護士(大阪)

事案の概要

原告は37歳の男性で現在無職(購入時は期間契約工(年収約300万))。平成17年に母親の遺産約1億円超の金融資産を承継したことを契機に株取引をはじめる。若干の株取引及び投資信託(海外債券への投資含む)等の購入歴あり。平成19年7月、被告会社とファンドラップ投資契約を締結する際に本件仕組債の勧誘を受けて5000万円で購入する。その後、為替変動により仕組債の価値下落。平成24年12月損害賠償を求め提訴。

判決内容

1.本件仕組債について

本件仕組債は、米豪いずれか一方の通貨が基準価格より円安に進めば早期償還の可能性は高まるが、逆に円高に進めばクーポンを得られず、早期償還しない可能性が高まり、早期償還がされない時には、発行体の選択により、米豪いずれかの通貨により予め定められた金額で満期償還されるものであり、このようなクーポン発生や償還の条件自体は理解困難なものとは言えないとしつつ、その危険性について、①満期に至るまで投資資金の拘束が続く可能性は低くはなく、拘束が続いた場合には5000万円もの資金が30年間との極めて長期間拘束される、②早期償還のためには、米ドル及び豪ドルの為替相場が、設定された基準価格よりも円安に進む必要があるが、年2度の利払日の時点において、基準価格よりも円安となるかどうかを購入時点で予測するのは極めて困難であり、③為替相場が円高に進んだ場合に途中売却をすれば大幅に元本を欠損するリスクがある(社内時価[<購入価格]を基準に売却価格算定される)と指摘したうえ、本件仕組債を「危険性が相当に高い商品というべきである」と評価した。

2.説明義務違反

原告の属性からみて、本件仕組債の購入に際して具体的な説明が必要であり、説明書の内容のみで具体的リスクを十分に認識し得たとは言い難いとしたうえ、リスク等の評価について説明が不充分である点を具体的に指摘した。主なものとしては、①クーポン発生条件の説明の際「当時の為替レート」を用いて説明していること(商品設計上このレートではクーポンは当然発生する=リスクを過小評価させる)、②元本割れリスクについても、30年の資金拘束があり得ることの説明はなされたものの、上記レート(満期償還レートよりも相当円安)によれば大幅な差益が生じる想定となること、③途中売却について、説明書の記載以上の説明は行われておらず、途中売却の方法、売却価格の見込み等は全く説明されていないこと、など。また、これに加えて、購入の際に原告が、円高相場の動きを指して「買いチャンスだよね?」と発言し被告担当者もこれを肯定した経緯もあり、本件仕組債を原告が(被告担当者も?)理解していないことが窺われた。

3.損害

原告は本訴中も(現在も)本件仕組債を保有。ゆえに、本件仕組債の時価及び受取済クーポン額が損害から控除される。時価については、口頭弁論終結時の被告社内時価から5%を本件仕組債の時価と評価。

4.過失相殺

一応の投資経験と知識があったことを前提に、資料による一応の説明を受けた点、自らインターネット等で調べて代替の商品内容を理解していた点。自ら疑問点を確認する等して商品の理解に努めていれば、リスクを把握して購入を回避していた可能性もある点など、から原告に6割の過失があることを認定。

報告者コメント

仕組債訴訟の一般的な注意点を踏まえ、本件仕組債訴訟での工夫等について多岐にわたって詳細な解説が行われた。主な点は次の通り。

1.商品特性について十分に理解し、裁判官の持つ疑問に即時かつ的確に答えられるように準備すること。

2.超長期取引である特徴として、逸失利益(30年後に償還されたお金の現在価値)を考慮しないと損失を把握できず、その経済的意味を裁判所に理解してもらうようにすること。

3.「利ざや論」については、利ざやが大きいから不当だとか、儲かる確率が低いという使い方よりもむしろ、購入価格と比べて社内時価が低いと言う結論に言い換え、途中売却時の元本欠損リスクが高いと言う主張に結び付ける。

4.時価の機能についての分析

時価の定義(将来のキャッシュフローの現在価値)から、二つの機能に分けられる。

  • (a)購入時の投資判断における時価
    ⇒[a1]どの程度平均的に損をするか得をするかの判断、[a2]参照指標の変動に伴って将来の損益の期待値がどのように変動するかの認識、に分けられる。
  • (b)購入後のリスク管理における時価
    ⇒仕組債の場合は途中売却の場面にあらわれる。

証券会社の主張の傾向として、[a1]のリターンの問題部分にのみ着目し、顧客の「相場観」による自己責任を強調する。[a2]及び(b)のリスクの問題はそもそもオプション評価モデルによる時価評価とかけ離れた「相場観」の通用しない分野である。仕組債を売却(デリバティブなら解約)するときは、業者の計算により算出された時価を元にした金銭授受が行われるのであるから、一般投資家にとって唯一のリスク管理方法である売却(仕組債)ないし解約(デリバティブ)の際に、どのようなキャッシュフローとなってリスクが現実化するのかを当初契約時に把握しておく必要がある。そのためには業者の計算による時価の特性を知っておく必要がある。

5.外務員反対尋問の目標について

反対尋問の着眼点は、あるべき投資勧誘と現実の勧誘の乖離。①たんに提案書を読み上げただけの説明、②勧誘時のレートを用いて試算し、それ以外の不利なシミュレーションはしなかったこと、③他の商品は勧めなかったこと、④流動性の欠如の説明がなかったこと、⑤途中売却の方法について全く説明がなく、むしろ売却できることを前提とした説明をしたこと、⑥本件仕組債の日々の時価が(投資家はもとより外務員ですら)分からないこと、⑦格付けについて超長期取引であることに則した説明をしていないこと、など。

平成22年10月12日の大阪高裁判決とあわせ、今回の判決を参考にしてFXターン債等為替連動型仕組債の訴訟における勝訴を目指して努力を続けるべきである。

平成28年01月14日

テーマ:「デリバティブ商品の構造とプライシング」

外部講師:足立教授@同志社大学

報告内容

今回の例会では、同志社大学政策学部ならびに同志社大学大学院総合政策科学研究科教授である足立光生先生から「デリバティブ商品の構造とプライシング」とのテーマでご講演をいただいた。足立先生は、「金融工学を勉強しよう」(日本評論社)などの著書があり、金融工学の専門家の観点から、デリバティブ商品についての解説をいただいた。

冒頭

まず冒頭で、個人投資家にもデリバティブ商品が提供される中、個人投資家は、一次資産(株式)投資と二次資産(デリバティブ)投資の違い、すなわち、資産構造の違いやボラティリティ・トレーディングの認識を持つことが必要であるとの問題意識が示された。

講演の前半

講演の前半では、デリバティブ商品の構造についての解説があった。

オプション取引について、近年の中小企業等を対象とした商品の特徴に触れつつ、その構造についての解説があった。数式等の複雑な話はあえて行わずに平易な解説をしていただけた。

講演の後半

講演の後半では、デリバティブ商品のプライシング(時価)について、以下のような解説があった。

すなわち、時価を計算するためのプライシング・モデルには原資産の変動に対する思想が含まれており、この思想についての、販売者サイドと投資家との同意が必要であること。また、プライシング・モデルにはとりわけ原資産の変動性に対する相場観として主観的な「変数」(ボラティリティなど)を代入する必要があるが、これについても、販売者サイドと投資家との同意が必要であること。そして、これらの点について一致がないと時価が一意とはならない。

その後、足立先生の発表に対する質疑応答や議論が行われた。

報告者コメント

今回の講演では、デリバティブ商品の構造を分かりやすく解説いただき、日ごろデリバティブ投資の問題に取り組む当研究会会員にとって、大変有意義な内容であった。また、デリバティブ商品の時価の開示について議論することも多いが、今回の講演を踏まえれば、その時価については、いかなるモデル・変数を用いているかという点も顧客に開示されることが重要なのではないかと思われた。

平成27年12月10日

テーマ:神戸地方裁判所姫路支部平成27年4月15日判決(証券過当取引)

報告担当:安田孝弘弁護士(姫路)

事案の概要

原告は、長年事務職として勤務していた50代の女性。流動資産としては1000万円程度。

  • 約1年半の間に、株式信用取引を144回(22銘柄)
  • 損失777万5622円(うち手数料が370万8227円)
  • 手数料化率:47.69%
  • 年次回転率:10.740%
  • 保有期間が10日以内の取引が約30%
  • 適合性原則違反が認められ、598万2958円認容された(過失相殺3割)

本判決に対し、被告が控訴したが、判決期日の3日前に、被告(控訴人)が控訴を取り下げ、確定。

判決内容

1.適合性原則違反

①:最高裁平成17年を引き合いに出し、信用取引の勧誘自体が適合性に反して不法行為法上も違法になるか、②:本件信用取引が具体的な取引状況に照らし適合性の原則に反して不法行為法上も違法となるかの2段階で判断。②のみ認容。

①について

信用取引の危険性に触れ、原告の投資経験からハイリスクな信用取引をする足りる十分な経験を有していないこと、録音記録から信用取引をするための知識が不十分であること、投資目的が最初の顧客カードの記載(中長期、投資資産の増大)から変更されている(短期、積極値上がり益重視)理由がないことから原告の投資以降が中長期の投資資産の増大にあること、原告の資金が定年に備えた老後の資金であることを認定。

しかし、投資意向が元本重視でないこと、原告の経歴や取引の仕組みから、信用取引の仕組みやリスクについて一応の理解を有していたこと、録音記録からみて追加保証金の存在を認識していたことを理由に、否定。

②について

原告がハイリスクのある信用取引を行うための十分な経験を有していないこと、新聞の株価欄の見方を理解していなかったこと(録音記録)、信用取引の知識が不十分であったこと(録音記録)、取引当初から買付金額が多かったこと、取引が経過しても原告が取引状況を把握できなかったこと(録音記録)にもかかわらず買付が増大したこと、原告が損失の返済のための入金の必要性、手数料の計算方法等について認識できていなかったこと(録音記録)、二階建取引についての説明の欠如、「新値」についての虚偽説明、取引が担当者の提案によりなされたこと、取引期間、回転率、手数料化率を理由に、認定。

2.説明義務違反、断定的判断の提供、実質一任取引

いずれも否定。

3.過失相殺(3割)

原告が一応の理解をしていたのに漫然と取引したこと、取引を途中で止めなかったことから3割過失相殺。

報告者コメント

本件では録音記録が重要であり、録音記録から、原告の知識理解不足が浮かび上がってきた。少し前に他事件で証拠保全したこともあったためか、本件では、被告は録音記録を任意に開示してきた。

意見交換
  • 平成17年最高裁判決を受けての適合性原則違反や過当取引の位置付け
  • 回転率の主張、立証のやり方
  • 録音記録の重要性(証拠保全の重要性)

等について意見交換された。