研究会活動

平成28年 活動報告

INDEX

平成28年08月18日
8月例会
平成28年07月14日
テーマ:「銀行によるデリバティブ取引と法人顧客の適合性」
山田剛志教授(成城大学法学部)
平成28年05月12日
テーマ:高齢者に対する外債・投資信託の勧誘事例
報告担当:三木俊博弁護士、向来俊彦弁護士
平成28年04月21日
テーマ:大阪高等裁判所平成27年10月25日判決(私募EB債取引)
報告担当:三木俊博弁護士、松田繁三弁護士、今井孝直弁護士、古川幸伯弁護士

平成28年08月18日

8月例会

当会々員が担当している事案について情報・意見交換を行なった。

担当している事案

1.松田会員

【事案】高齢者に対する投資信託の乗換売買を中心とする事案。

2.今井会員

【事案】過当取引事案。

3.吉岡会員

【事案】過当取引事案。

4.古川会員

【事案】信用取引を含む過当取引事案。投資家本人が「信用取引」をしていた認識がないと言っている事案()。

5.山崎会員、三木会員

【事案】新興国通貨連動仕組債の事案()。最近、再び、仕組外債の勧誘販売が盛んになってきたようである。対象通貨が「新興国通貨」となっており(先進国通貨建てより)為替リスクが高いものが登場している。

平成28年07月14日

テーマ:「銀行によるデリバティブ取引と法人顧客の適合性」

山田剛志教授(成城大学法学部)

報告内容

最判平成25年3月7日や最判平成25年3月26日では、顧客が法人の場合、企業経営者であれば理解可能であるから説明義務違反はないとして顧客敗訴判決がなされ、各方面に影響力を及ぼしている。

従来、適合性の原則は、複雑な金融商品に対する理解力が低い高齢者等に対して問題となり、法人取引はその対象とならなかった。上記2判決も同様の考え方だが通貨デリバティブを巡る問題においてそのように簡略化してよいのか疑問である。顧客にヘッジニーズがないのに為替デリバティブ契約を締結された場合、メインバンクから勧誘されて合理的に拒否できなかった場合、公的な補助金を受給している社会福祉法人や学校法人に対して場合により事業継続できなくなるほどの損失を与えるデリバティブ取引を勧誘した場合などには適合性原則違反が成立する余地があるのではないか。

最判平成17年7月14日は、業者側の勧誘態様のみならず商品特性や顧客の投資経験・知識、投資意向、財産状態等の事情を相関関係説の中で考慮すべきと判示しており、勧誘は適合性原則違反の有無を検討する1つのファクターに過ぎない。これらの要素について相関関係を検討した場合、適合性の原則に著しく違反するとして不法行為法上も違法性になる可能性があり得る。

質疑応答の要旨

1.顧客に対して商品性やリスク等を説明しても理解できない場合には適合性原則違反になる場面が生ずる。

2.倒産しない規模であってもギャンブルだから適合性原則違反を主張できないかという意見もあるが、相関関係説を採るのであれば、顧客が説明を受けた上でリスクテイクできる範囲の取引ならば適合することになる。もちろん、商品特性がアンバランスであったり大量販売であったりするのであれば、相関関係説の要素にはなり得る。

3.結局、金融機関側と顧客側の事情を総合判断するべきであり、そこには集中投資、内部規制違反、勧誘後の事実も含まれるはずである。H17年最判からは排除の理論として主張されている狭義説は導き得ないのではないか。

4.H25年最判が事情判決であると裁判所に理解させるためにも、倒産可能性という要素を挙げるべきではないか。こんなにリスクがあるアンバランスなものを全支店上げて売るは問題ではないか。

平成28年05月12日

テーマ:高齢者に対する外債・投資信託の勧誘事例

報告担当:三木俊博弁護士、向来俊彦弁護士

事案の概要

事案1

取引開始当時84歳の一人暮らしの女性が、平成25年4月中旬から平成26年10月上旬にかけて、①韓国輸出入銀行が発行する、メキシコペソ建て・銀行債券に対し、総額約6400万円の投資を行い、約919万円の損失を被り、②ドイツ復興金融公庫が発行する、トルコリラ建て・銀行債券に対し、総額約1700万円の投資を行い、約163万円の損失を被った。被害回復を求めて、ADRの申立を行った。

事案2

取引開始当時80歳の無職女性が、平成20年10月から同年12月にかけて、1か月半の間に、世界銀行債に6134万円もの集中投資を行った。そのほかに、投資信託にも投資を行ったほか、実妹名義・長女名義の取引もあった。平成24年3月、報告者が成年後見人に就任した。取引当時の意思能力に問題がみられ、平成24年12月提訴。

事案3

取引当時87歳の無職男性が、平成24年4月から平成26年5月にかけて、外債と投資信託に投資した。男性は、平成14年ころ、脳血管性パーキンソン症候群を患い、平成17年ころ、硬膜下血腫により入院・手術を行うなどし、取引時の意思能力に問題がみられた。男性の死亡後、長女からの相談を受け、提訴準備中。

報告及び意見交換

事案1では、為替リスクが高い金融商品に集中投資がされていた点、本人が高齢者であった点から、FINMACのADRの申立てを選択。高齢者の被害事例において、業者の違法性の判断する際に参考にすべき考え方として、日証協の高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドラインの内容について報告及び意見交換がなされた。

事案2、3では、過去の時点における本人の意思能力の立証方法、及び外債のリスクに関し、為替レートと外債の価格とが連動していない場合があるという点(従って為替リスクについて説明すれば足りるというわけではないこと)につき報告及び意見交換がなされた。

平成28年04月21日

テーマ:大阪高等裁判所平成27年10月25日判決(私募EB債取引)

報告担当:三木俊博弁護士、松田繁三弁護士、今井孝直弁護士、古川幸伯弁護士

事案の概要

原告は、無職の50代の女性。流動資産は1000万円程度。元々両親からの経済的援助や相続により約1億円の資産を有し、ペイオフの上限のない決済性預金の入れておくなど、安全大事に保有していた。その後、みずほ銀行の勧めで仕組預金(特約付外貨定期預金)を行っていたが、平成20年4月、同じ建物の旧みずほインベスターズ証券を案内され、本件EB債を2口2068万円購入したところ、大きな損失を被ったため、訴訟提起。一審では、①適合性原則違反②説明義務違反③指導助言義務違反④金融商品販売法上の説明義務違反を主張したが、全面敗訴。原告側控訴して、逆転勝訴。

判決内容

1.投資意向

「亡Xは、現在及び将来の生活資金である預金の目減りをできる限り少なくしたいとの切実な願望も持っていたのであるから、本件EB債のリスク等についてきちんとした説明を受けておれば、大きな損失を被るおそれのある本件EB債を購入することはなかった。」

2.契約締結前交付書面交付の有無

(アプローチ履歴の記載、その日付後の電話録音の内容、受領書等の不交付等の事実踏まえ)「契約締結前交付書面の交付が失念されたのではないかとの疑いが払拭できない。」

3.金販法上の説明義務違反

「亡Xのように初めてEB債を購入する顧客が、本件説明書なしに、券面額を転換価格で除した数値が償還株数となるとか、転換価格と償還時株価の差額に償還株数を乗じた金額が償還時の損失となると想像することは困難である。」

「金融商品取引法は、契約締結前交付書面の交付を義務付けるとともに、記載内容に関する実質的説明(顧客に理解させるために必要な方法及び程度による説明)をしないで金融商品取引契約をすることを禁止するとともに、金融商品販売前に、『顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によ』り、元本欠損が生じるおそれ、元本欠損の原因となる指標、その指標が元本欠損を発生させる仕組みの重要部分を説明すべき義務を課している。」

「外務員は、株式償還となった場合に、どういう計算で何株償還され、亡Xの損失がどの程度の金額になりそうなのかという点について、何ら具体的な説明をしていない。」「すなわち、外務員は、契約締結前交付書面の交付をせず、かつ、株式償還による元本欠損のおそれや元本欠損が生じる仕組みの重要部分を説明していない。」

報告者のコメント

本件では、そもそも契約締結前交付書面さえも交付していない以上、「元本欠損を発生させる仕組みの重要部分」はもちろん、「元本欠損が生じるおそれ」についても、上記のレベルの説明すらもできていなかったはずだ、という心証を抱いたものと思料される。

アプローチ履歴や電話録音による、契約締結前交付書面交付の有無についての緻密な立証が功を奏した事案であった。

意見交換
  • 金販法上の説明義務の範囲・程度
  • 録音の存在・範囲(本件のような顧客からの架電のみ録音している等で、全てが開示されないケース)
  • 過失相殺と金販法違反との関係