研究会活動

平成26年 活動報告

INDEX

平成26年11月21日
テーマ:大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)
報告担当:松田繁三弁護士
平成26年04月21日
テーマ:平成25年3月7日・同26日金利スワップ取引・最高裁判決の判例評釈と同判決の射程距離
報告担当:長谷川博啓弁護士、安枝伸雄弁護士
平成26年02月13日
テーマ(1):仕組債訴訟における分析業者の活用について
テーマ(2):証拠として提出した分析結果報告書の整理・考察
報告担当:今井孝直弁護士、古川幸伯弁護士(文責:大濵巌生)

平成26年11月21日

テーマ:大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)

報告担当:松田繁三弁護士

事案の概要

原告は60代男性の会社代表者で、資産収入等はかなりあった。平成19年2月に30年債(本件仕組債①)、同年5月、6月に株価指数2倍連動債(本件仕組債②、③)を購入させれられたところ、②は1ヶ月で途中売却して利益を得たが、①は保有したまま時価評価大幅下落、③はノックインして元本0となり、大きな損失を被ったもの。

判決内容

1.本件仕組債①について

商品特性について、「米ドル又は豪ドルの円相場が円安方向に推移すれば早期償還となって元本(円貨)に加えてその20.30%のクーポンを取得することができ、円高方向に推移すれば、固定クーポンは別にしてクーポンを取得することができないまま満期(30年)まで本件仕組債①を保有し続けた上、満期時に元本が米ドル又は豪ドルで償還されてその時点における為替相場により元本(円貨)が毀損されるリスクを負うものであって、一般投資家にとって理解がさほど困難なものということはできず、また、一般投資家の負うリスクも主として為替リスクであるところ、早期償還条件が2年経過後のクーポンの累積額が元本(円貨)の0.20%という低い水準に設定された上、満期が30年という長期に設定されていることから、その間に為替相場の変動によって早期償還となる可能性も決して小さくはなく、一般投資家の負うリスクの程度は必ずしも高いということはできない」とした上で、適合性原則、説明義務違反ともに否定した。

2.本件仕組債②、③について

商品特性について、「日経平均株価指数とも異なる東証銀行業株価指数または東証電気・ガス業株価指数を利率および償還条件の指標とするものである上、早期償還条件およびノックイン条件が付され、ノックイン条件が満たされた場合には、当該指数の下落率の2倍の割合で元本が毀損されるというもので、その内容がやや複雑であって一般投資家にとって必ずしも容易に理解し得るものであるということはできない上、当該指数の変動如何によっては元本の全額が毀損されるという大きなリスクを負うものであるが、ノックイン条件が当初指数の約70%という低い水準に設定されているなど、対象株価指数の下落にも一定程度の耐性を有しており、そのリスクの程度は必ずしも高いということはできない。」と判示し、適合性原則違反は否定。

しかし、「ノックイン条件を満たした場合に投資家の負う元本毀損リスクは大きなものであり、この点が本件仕組み債②および本件仕組み債③のもっとも重要な商品特性およびリスクである」とした上で、「投資家に対し少なくともノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクの内容、程度について十分に理解させるに足りる程度の説明をすべき義務を負う」と判示し、本件においては、原告の理解を得るに必要かつ十分な説明を尽くさなかったものとして説明義務違反を肯定した。

さらに、本件仕組債③について、原告社長は、「利率は変動するものの、その満期に元本全額が償還されるいわゆる元本保証の商品であると誤信して、これを原告会社または原告社長において購入した」と認められるところ、「本件仕組み債③のノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクは、そのもっとも重要な商品特性かつリスクであるから、本件仕組債③の購入に係る契約において、原告社長には、本件仕組債③の最も重要な商品特性およびリスクに関する錯誤があり、この錯誤は当該契約の要素の錯誤に該当する。」と判事して、錯誤無効を肯定した。

3.認容額について

説明義務違反についても過失相殺を問題としていない、説明義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求の方が、錯誤無効による不当利得返還請求よりも、弁護士費用を加算した分認容額が大きくなるから、損害賠償請求で認容した。

報告者のコメント

元本保証の説明については、当初から主張していたが、文書提出命令申立の結果、任意で電話記録、接触履歴が提出されたところ、この電話記録を基に、元本保証を基調とした勧誘、勧誘時の担当者の主導性などがいっそう明らかになり、また同時に、接触履歴に虚偽記載や不正確な記載が多いことも明らかになった。そこで、元本保証の説明や接触履歴の虚偽の点などに重点を置き、尋問においても、徹底的に突いたことが功を奏して上記結論となった。

平成26年4月21日

テーマ:平成25年3月7日・同26日金利スワップ取引・最高裁判決の判例評釈と同判決の射程距離

報告担当:長谷川博啓弁護士、安枝伸雄弁護士

報告内容

長谷川博啓弁護士、安枝伸雄弁護士からの報告

金利スワップ取引に関する最判平成25年3月7日・同26日に関する以下の各判例評釈について丁寧な報告・解説があった。

多くの評釈は、平成25年3月7日判決が事例判決であるとして射程距離を制限的に捉えるものであったが、その一方で投資家側の自己責任を強調し、金利以外の株価、為替等を指標とするより複雑な金融商品についても同様に考えられるとするものもあり、今回の報告により、同判決の捉え方を整理することができた。

  • 論考(判例時報2185号64頁)
  • 評釈:青木浩子(NBL1005号30頁)
  • 評釈:三枝健治(判例時報2208号155頁)
  • 論考:松尾直彦(金融法務事情1976号18頁)
  • 評釈:吉川純(商事法務2002号29頁)
  • 評釈:天谷知子(ジュリスト1459号123頁)
  • 評釈:古田啓昌(民事判例Ⅶ106頁)
  • 評釈:加藤新太郎(金融商事判例1431号8頁)
意見交換

以上の報告を前提に、参会者が意見交換を行った。

平成25年3月7日判決は、最高裁判所民事判例集(民集)ではなく最高裁判所裁判集民事(集民)に掲載されているということで、先例的価値はそれほど高くない。同判決はいわゆる事例判決と言え、その射程距離は極めて限定的である。

このことを私たちが担当する個別の証券訴訟で主張するためには、商品特性、リスクの性質、投資判断の困難性、当事者の属性、取引の目的などを摘示し、それを踏まえて当該事案と同判決の事案がいかに異なるかを具体的に比較しながら主張する工夫が必要である。

平成26年2月13日

テーマ(1):仕組債訴訟における分析業者の活用について

報告担当:今井孝直弁護士

デリバティブ分析業者に仕組債の分析を依頼する場合、裁判でどのように活用するかについて、担当する事件で証拠として提出した分析結果報告書(※1)を素材として報告があった。

具体的には、
・分析依頼事項をどのように設定するか
・分析結果をどのように主張書面に反映させるか
という点について、依頼する際の分析業者とのやりとりや分析結果報告書(私的鑑定)を基にした主張書面の作成時に留意した点などを報告していただいた。

この報告を受けて、①金融工学手法による取引分析・リスク分析を私たちの主張・立証活動に活用することの意味(位置づけ)と是非(※1※2※3)、②活用する場合の分析依頼事項の設定内容、③分析結果におけるリスク評価の限界あるいは制約(例えば、重要である「流動性リスク」の評価が含まれていないこと)、④依頼する場合の分析(依頼)事項の設定内容、⑥分析結果報告書を原告主張に援用する場合の注意点(特に「絶対視」してはならないこと)、などについて議論が行われた。また、取引分析・リスク分析を分析業者に依頼する以外に、弁護士自身が、株価・為替変動などの過去データと「エクセル」を用いて分析する手法(※4)があるが、それらの比較なども議論された。

テーマ(2):証拠として提出した分析結果報告書の整理・考察

報告担当:古川幸伯弁護士

これまでに訴訟で提出した分析業者の報告書の内容についての「一覧表」の紹介があった。

仕組債(日経平均連動債、EB、為替連動債)や通貨オプションの事件で証拠として提出された報告書の分析項目を比較したもの。主要な分析項目:理論価格やノックイン確率・満期償還時の期待値(元本割れの程度)などについては、分析業者や依頼弁護士の別異によって大きな違いはなかった。