研究会活動

平成26-27年 活動報告

INDEX

平成27年10月08日
テーマ:福岡地裁平成27年3月20日判決(仕組債、外債)
報告担当:尾崎大弁護士(福岡)
平成27年09月4, 5日
第52回全国証券問題研究会京都大会
平成27年01月08日
テーマ:横浜地裁平成26年8月26日判決の検討
報告担当:石戸谷豊弁護士(横浜)
平成26年11月21日
テーマ:大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)
報告担当:松田繁三弁護士

平成27年10月08日

テーマ:福岡地裁平成27年3月20日判決(仕組債、外債)

報告担当:尾崎大弁護士(福岡)

事案の概要

事案1

妻が、証券会社の担当者から勧誘され、夫名義で3つの仕組債(日経平均株価連動・為替連動の仕組債など)を購入し、損失を被った場合について、適合性原則違反、説明義務違反による証券会社の不法行為が認められた事例(3割の過失相殺)。

事案2

妻が、証券会社の担当者から勧誘され、外国債を購入し、損失を被った場合について、適合性原則違反、説明義務違反による証券会社の不法行為が認められた事例(5割の過失相殺)。

判決内容

1.本件仕組債について

商品特性について、本件仕組債はいずれもリスクが高く、得られる利益とリスクの比較が容易でない複雑な仕組みを有する金融商品であると認定した。そのうえで、原告らの理解力は、本件仕組債の特性とリスクについて、担当者から一応の説明を受けたとしても、抽象的に利回りが良いとか、元本割れの危険があるという程度の表層的な認識にとどまり、商品の特性とリスクを理解した上で主体的に商品を選択する程度のものとし、本件仕組債の購入はその能力に比して過大な危険を伴っていたとして、適合性原則違反を肯定した。

また、説明義務違反についても、担当者はリーフレットを示すなどして一定の説明を行ったものの、利率や満期までの期間が5年であることのほかは概要の説明にとどまり、上記本件仕組債の特徴及びリスクを原告らが具体的に理解できる程度に説明しなかったとして、責任を肯定した。

2.本件外国債について

商品特性について、本件外国債は、その有する為替変動等のリスクはX2の知識・経験等に照らして理解が難しいものではなく、リスクと利益の関係についての投資判断がさほど困難であるとはいえないとした。しかし、投資資金は居住用マンションの購入資金として約1年後には必要となるものとK課長らがX2から聞いていたと認定したうえで、満期前の中途換金すなわち売付けが避けられない、その場合に為替変動リスク、流動性リスク等が現実化し大幅な元本欠損が生じ、マンション購入資金に不足をきたすおそれがある本件外国債は、資金の性質に照らし明らかに適合性を欠いていたとして、適合性原則違反を肯定した。

また、説明義務違反についても、X2が購入を希望したとしても、中途換金すなわち売付けをした場合に、為替変動リスク、流動性リスク等が現実化して大幅な元本欠損が生じ、その程度によってはマンション購入資金に不足するおそれがあることを具体的に説明した上で、慎重な投資判断を促すべき説明義務を負っていたが、その説明がなかったとして、責任を肯定した。

報告者コメント

1.電話録音とアプローチ履歴を対比するなどして細かく分析した結果、アプローチ履歴の記載内容(証券会社にとって都合のよいもの)が信用できないこと、担当者の陳述書・証言が信用できないことを立証することができた。

2.本件外国債は、本件仕組債より難解ではなく、X2らの取引経験からすると、勧誘の違法性が認められるのは容易ではなかった。しかし、電話録音により、X2の投資意向(投資資金を約1年後のマンション購入資金に充てる予定)を明確にすることができ、これにより、適合性原則違反と説明義務違反が認められた。

平成27年9月4, 5日

第52回全国証券問題研究会京都大会

第52回全国証券問題研究会が京都市(みやこめっせ)で開催され、本研究会の会員も多数参加した。

1日目

大会1日目の午前中は入門講座が行われた。タイトルこそ「入門講座」とされているが、まずは本研究会の会員である松田繁三弁護士から証券取引訴訟における証人尋問のノウハウを中心として、同会員の訴訟経験に基づいて具体的な解説があり、その後、東京弁護士会の桜井健夫弁護士から証券問題に関する最新のアップツーデートな情報のほか、日米英の仕組債販売等の現状について報告があった。

午後からは渡辺宏之早稲田大学研究院教授からデリバティブ・仕組債取引における金融商品取引業者等の「公正価格取引」と題する基調講演があり、従前ブラックボックスとなっていたデリバティブ・仕組債の時価が取引において本質的なものであること、また金融商品取引業者等の説明義務の観点からは取引の合理性判断のために時価が非常に重要な要素になることについて解説があった。

続いて櫻井豊氏(リサーチアンドプライシングテクノロジー(株)代表)から「デリバティブ・仕組債訴訟に取り組む弁護士が知っておくべき金融の基礎知識」と題する講演があり、業者側から見た商品設計の視点・目標や手数料を増やす手段、業者がポジションを処理する方法、一般顧客と業者によるリスク対応の差異などについて説明があった。

その後、上記両名のほか、本研究会の会員である田端聡弁護士がパネリストとなり、同会員の三木俊博弁護士がコーディネーターとなって、店頭デリバティブ取引の時価問題に関するパネルディスカッションが行われた。田端弁護士から証券訴訟の現状に関する報告があった後、パネリストらによって、「時価」の概念、市場性、説明義務論における位置付けなどについて熱心な議論が展開された。

2日目

大会2日目はMRI事件に関する弁護団報告、米国の違法収益の吐き出しに関するマドフ事件の報告、適合性原則の判断に関する平成17年最判の詳細な検討の報告が行われた。

その後、各地で全国証券問題研究会員が勝ち取った勝訴判決及び和解の報告があった。

今回は、福岡、大阪、姫路、岡山、浜松から仕組債ないし外国債について適合性原則違反、説明義務違反が認められた事例、過当取引について適合性原則違反が認められた事例など、それぞれについて詳細な報告があったが、本研究会からは、山﨑敏彦弁護士によるブラジル国債、東京電力債の勧誘に関する説明義務違反が認定された判決の報告のほか、今井孝直弁護士からは、銀行で購入した仕組み預金に関し、適合性原則違反及び説明義務違反を理由に銀行を提訴し、和解に至った事案について報告があった。

平成27年1月8日

テーマ:横浜地裁平成26年8月26日判決の検討

報告担当:石戸谷豊弁護士(横浜)

【事例1】横浜地判平成14年2月13日

生命保険代理店従業員が、顧客に融資一体型変額保険を勧誘し、契約させた事案において、同従業員の説明義務違反を理由に生命保険代理店および生命保険会社が不法行為責任を負うとした。変額保険契約は未解約の事案であったが財産的損害を認定したうえ、慰謝料についても3頁にわたって判示して認めている。

【事例2】東京地判平成25年7月12日判決(控訴審で和解成立)

原審は、業者が、顧客に為替デリバティブを勧誘し、契約させた事案において、原審は業者から顧客に対する説明義務違反はないとして本訴請求をおおむね認容し、顧客から業者に対する反訴請求を棄却した。控訴審では、和解が成立した。

【事例3】横浜地判平成26年8月26日

証券会社の従業員が女性顧客と、その子で、女性顧客の代理人である男性顧客を勧誘し、株価指数連動債の取引をさせた事案において証券会社が、適合性原則違反、説明義務違反による不法行為責任を負うとした。

報告者のコメント

事例1については、当初は、裁判官としては、定額保険とは違い、変額保険は投資運用によって保険金が変動することの説明があれば、運用が悪ければ元利金が返済できないことは理解できるという請求棄却の心証であったように思われた。しかし、期日を重ねる中で裁判官の視点が、顧客がどのように考えて契約を決断したかというものに変わったと思われる。

事例2については、説明義務違反について、原審は、書面と口頭の説明により基本的な仕組みとリスクを理解し得た、追加担保についても、書面の記載や信用取引の経験から理解し得た、中途解約の際、多額の損失が生じる可能性があることについても説明されていることを理由に契約するかどうかの判断は可能であったので、それ以上の説明義務があるとはいえないなどとした。しかし、控訴審の和解の席上で、裁判官に担保不足で強制された事案であるところ、十分資金があって担保を入れた場合や担保制度がない場合との具体的比較や損益の試算によって問題の所在を認識してもらい、単純な取引ではないとの認識をもってもらった。そのうえで、極めて特殊な担保制度であるため、為替レートの短期の急激な変動があった場合にも業者側の事情である担保の余力(担保不足額の計算は残存する全オプションの時価評価の1.2倍の計算)の問題で担保不足により顧客が予想しえない額の請求を受けること、その額は、かかる不利な条件で残存するすべてのオプションを「反対売買した場合に甲に発生する損金額として、乙が合理的かつ誠実に見積もった金額」であるが、その点について損金試算額と清算請求金額を比較するための表を提出するなどしたことにより裁判所が問題点を認識・理解してくれたことが和解につながったと思われる。

事例3については、勧誘の事実経過が詳しく再現できないことや証券会社各社への調査嘱託の回答による外形的には経験豊富な投資家像という不利な点もあったが、顧客の人間像を理解してもらったうえ、双方の供述・証言の信用性の争いを乗り切り、結果としてほとんど顧客側主張の事実経過が採用された。なお、証券会社が、各訴訟で社内規則の有無や接触履歴の有無について不整合な主張・回答をしてくることもありうるので他では違う回答・主張をしていることを指摘することも重要である。

その他、裁判例に関して、金融工学等に関心がある裁判官であれば格別、そうでなければ顧客側代理人の方で裁判例を示すなどして考え方のベースのお膳立てをするのが実務家としての役目である。また、業者側からも裁判例が提出されることがあるが、実務家は事案の攻防をよくみることが大切である。供述の信用性の問題から請求棄却ルートに乗っている裁判例もある。業者側提出の裁判例については、記録閲覧により法律論より事案の比重が高い旨の調査報告書の提出をすることも考えられる。

平成26年11月21日

テーマ:大阪地裁平成26年10月31日判決(仕組債)

報告担当:松田繁三弁護士

事案の概要

原告は60代男性の会社代表者で、資産収入等はかなりあった。平成19年2月に30年債(本件仕組債①)、同年5月、6月に株価指数2倍連動債(本件仕組債②、③)を購入させれられたところ、②は1ヶ月で途中売却して利益を得たが、①は保有したまま時価評価大幅下落、③はノックインして元本0となり、大きな損失を被ったもの。

判決内容

1.本件仕組債①について

商品特性について、「米ドル又は豪ドルの円相場が円安方向に推移すれば早期償還となって元本(円貨)に加えてその20.30%のクーポンを取得することができ、円高方向に推移すれば、固定クーポンは別にしてクーポンを取得することができないまま満期(30年)まで本件仕組債①を保有し続けた上、満期時に元本が米ドル又は豪ドルで償還されてその時点における為替相場により元本(円貨)が毀損されるリスクを負うものであって、一般投資家にとって理解がさほど困難なものということはできず、また、一般投資家の負うリスクも主として為替リスクであるところ、早期償還条件が2年経過後のクーポンの累積額が元本(円貨)の0.20%という低い水準に設定された上、満期が30年という長期に設定されていることから、その間に為替相場の変動によって早期償還となる可能性も決して小さくはなく、一般投資家の負うリスクの程度は必ずしも高いということはできない」とした上で、適合性原則、説明義務違反ともに否定した。

2.本件仕組債②、③について

商品特性について、「日経平均株価指数とも異なる東証銀行業株価指数または東証電気・ガス業株価指数を利率および償還条件の指標とするものである上、早期償還条件およびノックイン条件が付され、ノックイン条件が満たされた場合には、当該指数の下落率の2倍の割合で元本が毀損されるというもので、その内容がやや複雑であって一般投資家にとって必ずしも容易に理解し得るものであるということはできない上、当該指数の変動如何によっては元本の全額が毀損されるという大きなリスクを負うものであるが、ノックイン条件が当初指数の約70%という低い水準に設定されているなど、対象株価指数の下落にも一定程度の耐性を有しており、そのリスクの程度は必ずしも高いということはできない。」と判示し、適合性原則違反は否定。

しかし、「ノックイン条件を満たした場合に投資家の負う元本毀損リスクは大きなものであり、この点が本件仕組み債②および本件仕組み債③のもっとも重要な商品特性およびリスクである」とした上で、「投資家に対し少なくともノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクの内容、程度について十分に理解させるに足りる程度の説明をすべき義務を負う」と判示し、本件においては、原告の理解を得るに必要かつ十分な説明を尽くさなかったものとして説明義務違反を肯定した。

さらに、本件仕組債③について、原告社長は、「利率は変動するものの、その満期に元本全額が償還されるいわゆる元本保証の商品であると誤信して、これを原告会社または原告社長において購入した」と認められるところ、「本件仕組み債③のノックイン条件およびノックイン条件が満たされた場合のリスクは、そのもっとも重要な商品特性かつリスクであるから、本件仕組債③の購入に係る契約において、原告社長には、本件仕組債③の最も重要な商品特性およびリスクに関する錯誤があり、この錯誤は当該契約の要素の錯誤に該当する。」と判事して、錯誤無効を肯定した。

3.認容額について

説明義務違反についても過失相殺を問題としていない、説明義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求の方が、錯誤無効による不当利得返還請求よりも、弁護士費用を加算した分認容額が大きくなるから、損害賠償請求で認容した。

報告者のコメント

元本保証の説明については、当初から主張していたが、文書提出命令申立の結果、任意で電話記録、接触履歴が提出されたところ、この電話記録を基に、元本保証を基調とした勧誘、勧誘時の担当者の主導性などがいっそう明らかになり、また同時に、接触履歴に虚偽記載や不正確な記載が多いことも明らかになった。そこで、元本保証の説明や接触履歴の虚偽の点などに重点を置き、尋問においても、徹底的に突いたことが功を奏して上記結論となった。