研究会活動

平成31-令和2年 活動報告

INDEX

令和02年03月19日
テーマ(1):大阪地判令和2年1月31日(公募仕組債につき適合性原則違反を認めた)
テーマ(2):最近被害顕在化が見られる仕組債事案の情報交換
報告担当:(1)片岡利雄弁護士、(2)今井孝直弁護士
令和元年06月13日
テーマ:金鉱株投信のリスク説明
報告担当:今井孝直弁護士
令和元年05月15日
テーマ:過当取引・違法要件における口座支配性の意義の再検討
報告担当:三木俊博弁護士
平成31年01月17日
テーマ:村本論文を読み解く
報告担当:今井孝直弁護士、古川幸伯弁護士

令和02年03月19日

テーマ(1):大阪地判令和2年1月31日(公募仕組債につき適合性原則違反を認めた) テーマ(2):最近被害顕在化が見られる仕組債事案の情報交換

報告担当:(1)片岡利雄弁護士、(2)今井孝直弁護士

テーマ(1):大阪地判令和2年1月31日(公募仕組債につき適合性原則違反を認めた)

1.事案の概要

原告らのうち母は、仕組債、投資信託、外国株、株式信用取引に関し適合性原則違反、説明義務違反、過当取引により、また、個別株の売却に関し、「クロス取引」を行わなかった義務違反、取引方法の説明義務違反により不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事案。原告らのうち娘は、仕組債、外国株取引に関し、適合性原則違反、説明義務違反、過当取引による不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事案。

2.判決のポイント

母:投資信託・外国株につき適合性原則、説明義務違反否定。仕組債につき適合性原則違反肯定(過失相殺6割)、説明義務違反否定。株式信用取引につき、適合性原則違反肯定、説明義務違反否定、過当取引肯定(過失相殺2割)。

娘:仕組債につき適合性原則違反肯定(過失相殺6割)、説明義務違反否定。外国株につき、適合性原則違反否定、説明義務違反否定、過当取引肯定(過失相殺5割)。

3.報告者コメント等

説明義務違反の判断の薄さに落差あり。社内規則違反を重視している点が特徴。

主張、立証の工夫として、時系列で商品ごとの会話内容の要約を書面として提出。さらに、代表的な会話内容を抽出し、どの点が違法性を基礎づける事実となるのかを丹念に書面で主張。判決末尾添付のとおり、各商品の要素事項の一覧表を裁判所に一覧性のある表として提出。

4.意見交換等

投信取引の適合性原則違反の否定判断は、商品性を抽象化させている点でH17最判に抵触のおそれ有り。説明が尽きたところから適合性がはじまる(川濱教授@京大)と親和性ありか?

テーマ(2):最近被害顕在化が見られる仕組債事案の情報交換

1.大和証券販売の複数指標2倍リンク債について

複数の相談が寄せられている。商品の合理性自体にも疑問がありそうだ。当時のプレーンなレアル建て外債との比較はいかが?相談投資家は勧誘により元本は毀損しない商品でよい利率だと思って買っている点に注意。

2.日興証券販売の為替リンク債について

こちらも複数の相談が寄せられている。

書記役:安枝伸雄弁護士(京都)

令和元年06月13日

テーマ:金鉱株投信のリスク説明

報告担当:今井孝直弁護士

問題の所在

顧客は、証券会社の支店長から投資信託を勧誘された。今後値上がりが見込めるとして、「ゴールド・メタル・オープン」という投資信託を強く勧められ、500万円で購入。顧客は、金で運用する投資信託と理解していたが、その後、投資信託が下落して、現在は300万程度の評価で、▲200万近く元本割れ。

目論見書には、金鉱企業の株式を中心に積極的な運用を行う旨の運用方針、ギアリング効果がある旨の説明。説明として適切か、十分であるか。勧誘の違法性、損害賠償請求の可否。

検討内容
  • 本件投信の目論見書には金鉱株投資の留意点としてギアリング効果がある旨の記載。
  • 「ギアリング効果」とは、金価格の値上がりは、金鉱企業の増益に直結するため、金鉱株は金価格よりもダイナミックな値動きをする傾向を指す。
  • 相談事例では、金価格が6.7%上昇すると、金鉱企業の利益が+20%。金価格が▲6.3%下落すると、同企業が▲16.7%の損失となる旨。2~3倍の連動性ありのような説明。
  • しかし、相談事例では、金価格が▲1%しか下落していないのに、基準価格は、▲31%も下落している(金鉱株インデックスは▲22%下落)。
  • 「金鉱株投資」は「金投資」とは大きく異なるのではないか、また、なぜ、基準価格は、金価格の下落の30倍もの下落となったのか。その点に関し、リスク説明は尽くされていないというべきではないか。
  • 目論見書では、「金鉱株」と「金」の値動きを対比し、相関係数が0.79とある。相関係数は1に近づくほど、2つの資産が動揺の値動きをすると説明。
  • しかし、「金鉱株投資」と「金投資」は、相関性が高いとは言えないのではないか。下落要因は、別にあるのでは。相関性が高いと説明すること自体、誤解を招く。目論見書の虚偽記載、不実記載とならないか。
  • 目論見書には、「金価格」「金鉱株価格」の推移がグラフ化されている。丹念にみると、連動する時期もあったが、最近では大きく乖離している。
  • 注意書きにも、金貨価格の変動が金鉱株の値動きに影響を及ぼさないこともある。必ずしも、ギアリング効果が得られる保証はない旨の説明。
  • しかし、これが本質ではないか。むしろギアリング効果を強調することは誤り、誤解を招かないか。
  • 金投資のような安定性を強調することは、間違いである。外務員の勧誘は、目論見書と比較し、どうであったか。説明義務違反の有無。
参考となる事項

1.運用報告書や目論見書の記載内容は、投信運用会社に照会すると、有益な回答が得られることがある。

2.「ブラックロック投信」に関し、横浜地裁の勝訴判決がある(H24.1.25判決:証券判例セレクト42巻129頁)。

書記役:斎藤英樹弁護士

令和元年05月15日

テーマ:過当取引・違法要件における口座支配性の意義の再検討

報告担当:三木俊博弁護士

報告者が担当している事案を素材として、意見交換を行った。

問題の所在

1.過当取引としての違法性が認められるためには、①取引の客観的な過当性(取引の過度性とも言う)、②証券外務員による口座支配性(取引の主導性とも言う)、③証券外務員の悪意性が必要である。但し、③は①②の充足から推定される。以上は米国法実務法理からの言わば翻案法理である。なお、誠実公正義務を明定している我が国法制の下では③は不要との見解もある。

2.このうち②は、一連性ある売買取引において、対象となる個別金融商品、その数量・金額および売買時期等の投資判断を(投資家顧客ではなく)専ら証券外務員が行い、以って一連取引を主導することと定義される。いわゆる「実質的一任売買()」と同様すくなくとも近似した取引態様のことである。

3.しかし、証券外務員が当該口座を支配する態様(主導性の執り方)は多種多様であり、支配される側である(被主導者たる)顧客投資家の反応も多種多様である。そこで、上記②の要件の適用について、具体的事案に基づいて事実認定・事実評価に関する研究を深める。

検討内容

1.具体的事案として、証券会社が一般投資家に対して利益を保証する言動を行って、以後、一連性ある頻繁な短期売買を誘導した事案を取り上げて検討した。

2.当該事案では、顧客投資家は当初に前記利益保証言動を信じて高額の投資金を証券会社に預け、担当外務員に言われるがままに一連性ある売買取引を継続した。しかし、その途中で頻繁売買から生じる手数料の急増に違和感を覚えて、それ以降、前記投資金の一部を返金してもらった。しかし、また、減額した投資金で前記一連取引は継続した。以上の言わば特異な固有事情がある。

3.一連取引における具体的売買判断のすべては担当外務員が行っているため、口座支配性(主導性)要件の充足は、基本的には間違いないと思われる。しかし、顧客が頻繁売買に違和感を覚えて投資金の一部引き揚げたことが、それ以降においては口座支配性(主導性)を否定する要素に成り得るかについて、意見交換を行った。

4.確かに、一部でも投資金の返金を指示した(それができた)という事実は、証券外務員の取引遂行に(言わば)「口を挟める」ということを意味している。しかし、返金を指示する(それを為し得た)だけでは、具体的にどの銘柄を具体的にどのように売買するかという具体的な売買判断(=投資判断)には至っていない。前記のこと即ち投資金一部返金の資金捻出に係る具体的売買判断(同前)はすべて担当外務員が取り仕切った。そうである以上、当該外務員が一連取引において当該口座を支配している(主導している)ということに、基本的な変化はないと言える。口座支配性要件(同前)の充足に消長を来たさない。

5.また、当該事案では、証券会社(具体的には担当外務員の手配による)から定期定額の送金があり、当該顧客はこれを確定利益と認識(実は誤認)して受領継続していた。しかし、投資金の一部を引き揚げた後も従前どおりの金額が(投資金全額が存在する時と同様の)利益額となることは考えられない。その後も、定期定額の送金を前同様の確定利益と認識(誤認)したとすれば、それは不合理である。このような不合理な認識を持っていた当該顧客が、口座支配性(同前)を同人の元に回復することは考え難い。

6.以上の諸事情を考慮すると、検討事案では、その後(投資金の一部返金後)も証券外務員の口座支配性(同前)が認められる。

書記役:今井孝直弁護士

平成31年01月17日

テーマ:村本論文を読み解く

報告担当:今井孝直弁護士、古川幸伯弁護士

【前半】… 報告担当:今井孝直弁護士

1.はじめに~問題意識~

「リスク」=「期待損益の変動幅(の標準偏差)」

投資においては、「リスク管理」(①〜③)が観念される。

① リスクアセスメント

リスクの認識と特定、特定されたリスクの測定・分析に基づく発生頻度・強度(影響度)の評価(リスク評価)

② リスクコントロール

リスクが想定最大損失(VaR)として現実化する前の予防対策 → リスク許容度、損切り、転売可能性

③ リスクファイナンス

リスクが現実化した際の資金的な対策

「金商業者、金融庁や日銀などの金商実務では、投資におけるリスク管理の必要性と重要性が繰り返し指摘される。これに対し訴訟実務では、顧客の取引適合性具備や金商業者の説明義務の内容に関連し、リスクアセスメント中のリスクの認識、特定に関する知見を取り上げる。しかし、その余のリスクアセスメントの要素であるリスク計測・分析、リスクの発生頻度・強度の評価、あるいはリスクコントロールの知見はほとんど問題とされないのが実情である(後略)」

2.金商取引とリスク管理

リスクを対象とする取引では、顧客の自己決定を可能とし、必要とされる知識、情報は、商品の基本的仕組みやリスクに止まらない。その他のリスク計測、分析、リスク評価などの情報に加え、リスク回避・制限に必要なリスクコントロールに関する情報が必要である。

【後半】… 報告担当:古川幸伯弁護士

1.取引適合性があるといえるためには、

  1. ア 取引の基本的な仕組み、リスクなど、リスクの認識、特定に関する知見
  2. (+)
  3. イ それ以外のリスク測定・分析と評価、リスクコントロールに関する知見
  4. ウ これらの知見をシナリオ分析、ストレステストにより取引のリスクコントロールに活かすことができる能力

2.知的適合性中の「経験」適合性の主たる守備領域は、リスクコントロールに関する知識、経験の具備、適否判断にある。

3.リスク管理に関する情報は説明義務の内容とされるべき。判決などが、リスクアセスメント中のリスクに認識、特定のレベルに止めていることは問題。

4.リスク管理適合性は、一般顧客を基準とする合理的根拠適合性、商品適合性の判断に際しても問題となる。リスクコントロールが困難な商品等は、推奨が相当とされる合理的根拠に欠ける。

5.民法上、商品のリスクが一般顧客のリスク管理、リスク管理能力の限度を超えると判断されれば、一般顧客を基準とした契約適合性が問われる余地あり。

金商業者がかかる商品の販売勧誘を行う場合、適合性原則違反に問われるほか、勧誘を要件としない民法上の契約不適合の成否が問題となる。

書記役:片岡利雄弁護士